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2022/01/17 19:16



KISO ORIGINALでもたびたび紹介してきた木曽の名産品、すんき。地元特産の赤かぶを原料にして、塩を一切使わず乳酸菌発酵によって作られる国内外でも珍しい「無塩の乳酸菌発酵食品」です。すんきは木曽の厳しい冬を越える保存食として、毎年冬の初めに仕込まれます。いったいどのように作られているのか、普通の漬物と何が違うのか。

KISO ORIGINAL編集部では、赤かぶの収穫から、すんきの作り方までを取材させてもらうことができました。今回はその様子をお届けします。

|収穫は霜がおりてから


今回、取材させていただいた農園は、KISO ORIGINALを協業で運営している木曽おんたけ観光局の丸山文広さんの畑。「赤かぶの収穫があるよ!」と声をかけて頂き、11月の初め、編集部一同は丸山さんが所有している畑に伺い、赤かぶの収穫を体験させて頂きました。取材当日は気持ちのいい快晴で、もう終わりかけだという紅葉がとても綺麗でした。


▲御岳湖から望む木曽の紅葉

木曽福島駅から御岳湖を越え、畑は木曽郡王滝村の山間部にありました。8列ほど並んだ畝(うね)には、びっしり赤かぶが植って一面緑の葉を茂らせています。




赤かぶは毎年8月下旬〜9月上旬頃に播種(種まき)されます。その後秋の温暖な気候で葉が一気に成長し、冬の寒暖差で今度は実の部分が大きく成長するそう。霜が降りるほどの寒さの中で、赤かぶは鮮やかな赤色に染まっていき、また甘さも増していきます。丸山さん曰く「霜が降りたら収穫の合図」だそうです。

木曽地域には全部で6種類の赤かぶがあり、丸山さんの畑では、およそ300年前から栽培が始まっているといわれている「王滝かぶ」という品種をメインに扱っています。また、近年王滝かぶを品種改良した「王滝甘かぶら」という品種もありこちらも扱っていました。


▲王滝かぶ(奥)と王滝甘かぶら(手前)
 品種改良された王滝甘かぶらは、霜にも強く安定した生産が可能

さていよいよ収穫作業!まずは赤かぶを一斉に抜いていきます。王滝かぶと王滝甘かぶらの2種が混合しないように、気をつけながら作業を進めます。

最初は大きさや実の形など自分好みの赤かぶが出てくると「どうだ!」と見せ合っては一喜一憂していましたが、畑は広く、まだ先は長い……。徐々に黙々と集中して作業をしていきます。

この無心に野菜や土に向き合う時間が、普段都会で暮らす編集部にはとても新鮮で、一種のゾーンに入っていくような感覚を味わいました(笑)。


▲綺麗に並ぶ赤かぶたち

抜き終わったらその中から、形、サイズともに立派な10本を選抜します。選別した赤かぶは、来年の分の種としてこのまま花を咲かせ種になるまで育てられます。責任重大な任務に緊張しながらも、慎重に選ばせていただきました!


▲選りすぐりの10本の赤かぶたち

その後、規格サイズに当てはまらない小ぶりなものを省いた上で、葉と実の先を切り落とします。出荷先によってはここから実についている”ひげ”を落とすなどして、出荷できる状態となります。

|赤かぶの食べ方は?茎葉と実でそれぞれ違った食べ物に


▲葉実の先を切り落とす様子
 赤かぶの実は、切り落とすと中は白いことがわかる

王滝村ではかぶ(実)は「甘酢漬け」、茎葉部分を「すんき」の漬物にするのが一般的な食べ方ですが、今回出荷するのは実の部分のみでした。実はすんき用の茎葉部分は別途この2〜3週間前に収穫しているそう。

実も茎も葉も全部食べられている木曽の赤かぶですが、その商流の中で破棄される部分もあることは、編集部にとって新たな発見でした。実の部分も、規格サイズ外で出荷できない小ぶりなものが相当量ありました。こちらをなんとか活用していけないかーー。今後の商品開発に向けた課題やヒントを得た瞬間でした。


最後に採れたての赤かぶを、その場で頂きました。丸山さんも「普段、生では食べないよ」と心配そうな顔でしたが、これが意外と美味しい。苦味は少なく、ほのかな甘みとシャキシャキした食感で、フレッシュサラダとして他の野菜と食べたら間違いなく美味しいでしょう。僕らもこれまでたびたび食べてきた赤かぶですが、新たな一面を発見する良い機会となりました。

|美味しいすんき漬けは一代ではつくれない


続いて、王滝村で赤かぶ漬け・すんき漬けの製造・販売している「ひまわりマーケット」さんにご協力いただき、すんき漬けの様子を取材させて頂きました。

集合場所に伺うとすでに仕込みが始まっており、大きな鍋が火にかけられお湯が沸かされていました。



葉を切らずにまるごと漬け込むのが王滝村のすんき作りの特徴で、一般家庭のお鍋ではサイズ的に難しいので、大きな鍋を使って仕込みます。同じ木曽でも開田や三岳など他エリアではあらかじめ葉を細かく刻んだ上で漬け込むのが主流だそう。

では、実際にすんき作りの工程を見ていきます。
まずは葉を水洗いし、土やごみをきれいに取り除きます。松の葉など細かなごみが葉の隙間に入っていることが多く、なかなか根気のいる作業。冬の時期に冷水を使うので、ここが一番大変そうな作業でした。




きれいに洗ったすんきは、紐で縛って束ねられ、先程の大きな釜でさっと湯通しします。時間にして約50秒。この茹で時間もすんき づくりの大切なポイント。、茹ですぎると、葉が柔らかくなり、すんきのシャキシャキした食感が失われてしまいます。一気に大量に仕込むので、湯通しする際の火の具合によって、時間を細かく調整して湯通ししているのが印象的でした。



湯通しした葉は、湯を切った後すぐさま漬樽へ入れ、声をかけあいながら、無駄なく一連の作業がなされていきます。毎年毎年こうして同じ工程を繰り返して生活を紡いできたのだろうなと、木曽地域の文化・伝統の歴史の深さを感じる瞬間でした。



漬樽へ入れたすんきは、前年に漬けたすんきを”種”として、漬け込む葉と交互に重ねていきます。先程湯通しをしたお湯も適宜入れて、桶がいっぱいになったら空気が入らないように重石をして蓋をし、熱を逃がさないよう毛布などで温め1日ほど保管。その後冷暗所で寝かせ、1ヶ月ほどで完成です。

すんきは100%乳酸菌発酵なので、温度管理が最も重要。湯通し後の熱で乳酸菌が発酵しすっぱくなり始めるため、最初は保温をしますが、長すぎると逆にカビが発生してしまう。この温度管理に熟練の技・感覚が光ります。

このように、塩などの添加物を一切使用しないすんきは、唯一、すでに乳酸菌発酵されている前年のすんき漬けを”種”として一緒に漬けることで作られるのです。この工程が本当に珍しく、我々も初めて聞いた時は驚きました。地元では「美味しいすんき漬けは一代ではつくれない」と言われており、前年美味しく漬かった「すんき名人」のすんきの”種”を時にはシェアをしながら、その味と技術をつないできました。



改めてすんき作りの工程を取材すると、とても手間隙がかかっていることがわかりますし、現代のようにスーパーで簡単に食料品が手に入らなかった時代の先人たちの知恵と、それを現代まで引き継ぐ今の人たちの想いを感じることができました。

作業中、取材班に「まだ浅漬けで味の違いがわかるから食べてみて」と、まだ漬け途中のすんきを特別に食べさせて頂きました。食べてみると、見た目や食感はすんきそのものなのですが、すっぱさが強く、すんき独特の旨味やコクがまだ出ていない印象。乳酸菌で発酵した後に、時間をかけることで、旨味が熟成されていきます。



今回漬け込むところまでは見れなかったのですが、実の部分も酢漬けにするために大量に集められ、大きな木の樽に入れて水で洗われていました。



▲赤かぶの実を洗う様子

すんきはこうして毎年冬に仕込まれて、翌年の春先〜夏頃まで各家庭、お店で食され、夏を過ぎるとどこのお店でもすんきがなくなります。もし余ったとしても夏を過ぎると味や鮮度が落ちてしまうため、地元のお店などでは冬限定で販売されているのです。

近年では健康や美容への効果が注目され、さまざまな商品に加工されて1年を通して楽しまれています。KISO ORIGINALでもいくつかすんきを使った商品を扱っていますので、ぜひこの機会にお試しいただき、木曽の伝統の味をお楽しみください。

Photo & Edit by KISO ORIGINAL

取材協力 : 丸山農園 / ひまわりマーケット


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