塩を使わないお漬物「すんき」として有名な、長野県・木曽の伝統野菜「赤かぶ」。
茎と葉は、乳酸菌発酵によって作られる漬物「すんき」として。かぶ(実)の部分は「甘酢漬け」として、茎葉と実でそれぞれ余すことなく使われる。この製法は、古くから木曽川の上流に沿う村々で受け継がれてきた、木曽ならではの特産物である。
しかし、味は変わらなくとも、傷や大きさ・形が一定水準に達していないことで、流通から外されてしまう規格外野菜や、季節や時期が違うため廃棄されてしまう部分もーー。こうした問題は、近年全国的にも問題となっているが、生産農家だけで消費することは難しいのが実状だ。
この実態を知った私たちは、余った「赤かぶ」をどうにか活用できないかーー。
そんな想いから
昨年に続き、今年も赤かぶの収穫体験に。今回は余った葉や茎、実などの赤かぶの再利用について、収穫の様子とともにお届けする。
|赤かぶの循環サイクル
訪れた畑は、今年も木曽おんたけ観光局の丸山文広さんの畑。今年出来上がった赤かぶは、昨年、KISO ORIGINALの編集部が選んだ、かぶの種だ。素人なりに選んだ種は、ちゃんと実っているだろうか・・・そうしたプレッシャーの中で畑に向かうも、丸山さんが夏から大事に育ててくれた赤かぶたちは、とても立派に育っていた。
▲MARUYAMA FARMの王滝かぶ
木曽の赤かぶは、全てを出荷せずに、幾分かを残して花を咲かせ種になるまで育てらる。そして翌年分のものとして、種蒔きをすることで、またたくさんの赤かぶが出来上がるのだ。木曽の赤かぶ産業はこうした小さな循環とともに成り立っている。
一年越しの想いで、その姿を著した赤かぶは、去年の収穫のときとはひと味もふた味も雰囲気が違う。一つひとつが丁寧に大切に育てられていた背景をより強く感じた。また、去年に比べて、実の大きな立派なかぶが多かったのも印象的だ。農作を繰り返し土壌の整備が進むほど、野菜や花草にとって、より栄養の高い豊かな環境が育まれるのだと実感した。
|味はピカイチ。赤かぶの再利用
見た目はともかく、収穫したての赤かぶは、鮮やかな赤の彩りもさることながら、シャキシャキしたフレッシュな食感で、やさしい甘味が特徴的だ。この美味しさを、もっと知ってもらいたいーー。
そんな想いから、収穫後にすぐに運送できる近郊エリアで、使用してもらえる飲食店がないか呼びかけをおこなったところ、松本市内の飲食店が快くOKをくれた。実際にお弁当やお店の料理メニューの一部の食材として使用していただけることに。
編集部が以前に伺い、繋がりのあった、松本市の飲食店「エミリ」さんを中心に下記の3店舗に協力いただいた。
① 地元産の旬の野菜やハーブ、スパイスを使った料理を提供するカフェバル「Emm(エミリ)」。
▲カレー弁当の付け合わせ(赤かぶの葉を炒めたもの)
※その他、赤かぶの葉を使った「燻製ベーコンのパスタ」と、赤かぶの実をピクルス漬けにしていただきました。
② フードユニット「つむぎや」の金子健一氏が長野県松本市で営む6席だけの小さな食堂「アルプスごはん」。
③「古いけどいいもの」をテーマに古民家をリノベーションしたダイナー「Oldies b Goodies」。
Shop Information
Oldies b Goodies
〒390-0802 長野県松本市旭1丁目1−20
Morning 8:00-10:30(L.O)
Lunch 11:00-14:00(L.O)
Cafe 14:00-16:00(L.O)
Dinner 18:00-20:00 (L.O)(Sat Only)
定休日/毎週月曜+水曜
https://www.instagram.com/oldiesbgoodies/
|一人ひとりができることから「考える」
本来であれば、規格外野菜や廃棄されてしまう野菜を、流通に乗せるところまでをプランニングすることが理想的だが、家庭農園が多く〈少量多品目栽培〉を主流としている、木曽エリアの生産量ではなかなか実現が難しい課題もある。
だからこそ、今年は自分達なりにアレンジを加えて食す、ところまでKISO ORIGINALで挑戦。
やさしい甘さと香りの「赤かぶ」の美味しさをできる限り引き出せるようなレシピを試作してみた。
松本の飲食店のように、地元の店舗と提携できるような仕組みづくりまでには、時間も労力もかかるからこそ、まずは一人ひとりができることから考える。このレシピを見た人は、ぜひ挑戦してみてほしい。
|豚ひき肉とかぶのとろっと煮
▲ご飯にかけて食べてもおかずとしてもどちらにも合う便利な一品。体の芯から温まる、あったかレシピ。
<材料(1人分)>
赤かぶ…2個(小さめのサイズのものであれば4個程度)
豚ひき肉…100g
(A) 水…250ml
(A) ほんだし…小さじ1
(A) 醤油…小さじ1
(A) 料理酒…大さじ1
(A) 砂糖…小さじ1
水溶き片栗粉…大さじ2
<作り方>
1. 赤かぶは茎を少し残してカット、水洗いして根本の土汚れを落とす。葉の部分もさっと水洗い。
2. 実はお好みの大きさ(4等分)にカットして皮を厚めに剥く。葉の部分も小さめにカット。
3. 2と(A) を入れ中火で熱したあと、豚ひき肉を入れほぐします。
4. 全体に火が通ったら、水溶き片栗粉でとろみをつけて完成。
|ツナとかぶのマッシュサラダ
▲かぶのふわっとした新しい食感と甘み、ツナとマヨネーズのコクがマッチした新たな味わい。こんがり温めたブレッドに乗せて食べても美味しそう。
<材料(2人分)>
赤かぶ…3個(小さめのサイズのものであれば6個程度)
(A)ツナ缶…1缶
(A) マヨネーズ…大さじ2
(A) 醤油…小さじ1
(A) 粒マスタード…大さじ1
(A) 塩胡椒…適量
パセリ…適量
<作り方>
1. 赤かぶはヘタ部分からカット、水洗いして汚れを落とす。葉の部分も小さめにカットして、さっと水洗い。
2. 実はできるだけ小さめに(8等分)にカットして皮を剥く。
3. 2にラップをして500Wのレンジで6~7分加熱。
4. 葉を取り出して、実だけを好みの硬さに潰していく。
5. 4に(A) を入れて混ぜる。最後にパセリをふりかけて完成。
|赤かぶまるごと炊きご飯
▲シャキシャキとろっとしたかぶの食感と甘さが美味しい炊き込みご飯。
<材料(2人分)>
赤かぶ…3個(小さめのサイズのものであれば6個程度)
お米…2合
(A) 塩…小さじ1
(A) 料理酒…小さじ2
(A) カットわかめ…適量
ごま油…大さじ2
しらす…1パック
白だし…大さじ1
<作り方>
1. 赤かぶはヘタ部分からカット、水洗いして汚れを落とす。葉の部分も小さめにカットして、さっと水洗い。
2. 実はできるだけ小さめに(8等分)にカットして皮を剥く。葉の部分も小さめにカット。
3. 炊飯器にお米とカットしたかぶの実の部分、(A) を入れて炊く。
4. 熱したプライパンにごま油としらすを入れ、香りが立つまで炒める。
5. かぶの葉と白だしを入れ、混ぜながらさっと炒める。
6. ご飯が炊けたら混ぜて、5をトッピングして完成。
Photo & Edit by KISO ORIGINAL
取材協力 : 丸山農園
Special thanks :Emm(エミリ)さん / アルプスごはん さん / Oldies b Goodies さん
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